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2018年09月25日(火)

Ninja H2 Super Charger スラストクリアランス確認

Ninja H2 Super Charger スラストクリアランス確認
 
 
 川崎重工業(KHI)グループの持つ技術の粋を集め、ある意味作品とも云える「Ninja H2」
「H2」の称号は1972年の750SS / MACH4でしたが、40数年の月日を経て2015年に「H2」を冠した車両が復活!
 
 2015年「H2」の登場から、毎年アップデートやグレード・モデルの追加を経て、2019年にはなんと!231psになり発売されます!!
 クローズドコース仕様のNinja H2Rに至っては310ps(ラムエア加圧時326ps)と、まさにモンスター級。
 
 
 そして、このハイパワーを生み出しているパーツが「スーパーチャージャー」です。
 駆動回転力によって吸い込んだ空気を圧縮し、燃料とともにエンジンに送り込み、自然吸気以上の燃焼エネルギーを発生させハイパワーを生み出します。
 
 
今回はそのスーパーチャージャーの点検のお話。
 
 
 左の写真で奥に見えるのが、カバーを外して見えるようにしたスーパーチャージャーのタービンユニット(コンプレッサー側)
 このタービンが高速で回転することで吸い込んだ空気を圧縮します。
 
 右の写真は、そのタービンが回転する際にどれだけスラストクリアランスがあるかをマイクロゲージを使って測定しています。
 スラストクリアランスとはタービンが回転する際に必要となるわずかな隙間のことで、その隙間が大きすぎるとガタつきから回転不慮、磨耗、破損となってしまいます。
 H2の場合はオイルによる潤滑状態でフローティング状態になっています。
 高速で回転し続けることで高熱になるパーツですので、そのわずかなクリアランスへ異物の混入などによる物理的な衝撃や使用しているオイルの品質・交換のタイミングなどで悪くしてしまう可能性があります。
 
 
 初期トラブルを回避するためにも、メーカー保障期間中は特に点検することをお勧めします。
 
 
 レアなケースですが、スーパーチャージャーが破損するとその勢いて破損したパーツをエンジンに送り込みエンジンが一発で破壊されてしまうことも考えられます。
 
 普段のしっかりとしたオイル管理! 乗り出しのまえにしっかり暖気!
 を、心がけてください。
 
 このスーパーチャージャー。破損すると本体だけでなく周辺パーツの交換が必要になり、修理費用がとても高いので大事にしてください。
 
 外装を綺麗にするだけではなく、走る・止まる・曲がるといった安全面のメンテナンス。
 快適に永く乗り続けられるように外から見えない部分を少し気にしてみてください。
 そんなメンテナンスなどのご相談、お店で伺います。

2018/09/25 18:00 | 整備日誌♪ | コメント(0) | トラックバック(0)

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2018年09月20日(木)

ZX-6R 2009 GRN 整備

kawasaki ZX-6R GRN ZX600R 整備
 
 
2009年式 ZX-6R の整備内容のご紹介。
599ccと636ccを行ったり来たりの排気量設定の中、中量級スーパスポーツとして軽量化されまた、それまでのセンターアップマフラーからサイドショートマフラーにへの変更や足回りの刷新などで、2009年にフルモデルチェンジしたZX-6Rです。
 
 
いきなりバラされた画像からスタートです。
年式も2009年と10年に近くなってくると、いろいろ掃除できない部分に汚れがたまってしまいます。
今回は隅々まで点検・整備・メンテ・清掃のフルコースになります。
 
 
そうです。ステムベアリング。必ずメンテナンスします。
カスタムやオーダーのメンテナンスの際にはステムの清掃やグリスアップは行いますが、なかなか定期的にメンテナンスされる方は少ないと思います。
車両のフレームと前輪の操舵を担う部分で、バイクを走らせる限り常に動いていて、とても大きな力が常に作用し、操縦にはとても重要な役割をしています。
バラしてみるとメンテナンスしていても劣化して固着したグリスが見られます。
 
 
ステムベアリングの様子。
 
 
グリスを拭き取って清掃してみると、ベアリングの接点部分に磨耗のあとがありました。
稼働部分なので経年によってどうしても磨耗してしまいます。それを放置してしまうと、少しの傷が擦れ合ってさらに大きな傷になってしまい、スムーズなハンドリングができなくなってきてしまいます。
新品に交換します。
 
 
ステムベアリングを取り除きしっかりと清掃します。
 
 
グリスをたっぷり塗って。。。
 
 
グリスをたっぷり塗って、組み付けていきます。
 
 
サスペンションのメンテナンスです。
 
 
バラして、メタルパーツの磨耗や、樹脂パーツの劣化などを確認していくと、ダストシールにひび割れが見つかり新品に交換です。
 
 
ホイールハブのベアリングも取り外し、ハブ側を綺麗に清掃します。
 
 
タイヤも交換し組み付けます。
 
 
エアクリーナも確認(交換)インテーク部分も点検清掃します。
 
 
エンジンのヘッドカバー部分。お次はプラグの確認です。
外してみるとこんな感じ。
 
 
新品と並べてみると、そんなにすすけていませんが交換します。
 
 
続いてACG(交流発電機)のメンテナンスです。
車両の電制に使用されているのは直流電源ですが、エンジンの回転動力を用いてコイルと磁石による電磁誘導で効率よく発電する電源は交流電源になります。
発電された交流電源を整流し直流電源としてバッテリに蓄え使用します。
電源がなければバイクは動きませんし、発電しなければ電源が枯渇して止まってしまいます。

このZX-6Rは中量級スーパースポーツモデルとして、高回転で走ることが前提で作られています。
エンジンを高回転で回すことによって、オイルがよりよく循環し潤滑・冷却をおこないます。
街乗りなどで高回転にする機会が少ない場合、その冷却効果が効率よく行えないようなことがないように、マグネットローターの固定ボルトに冷却潤滑用ホールの空いた対策品を使用しました。
万が一、冷却効率が得られず熱破壊をしてしまうことを防ぎます。
 
 
 
そしてリア周りの点検整備を行います。
 
 
必ず行うのがハブベアリングの点検整備これは必須です。
 
 
写真には取りきれていませんが、そのほか諸々の整備をした車掌の完成写真は→こちら!!

2018/09/20 22:00 | 整備日誌♪ | コメント(0) | トラックバック(0)

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2018年08月28日(火)

ZX-12R燃料系メンテナンス

ZX-12R燃料系メンテナンス
 
 12RといえばKawasakiの数ある車種の中でとても特徴的といえる車両で、2000年に新世代フラッグシップとしてデビューし、バックボーン型モノコックフレームや、航空部門の技術者参加によるエアロダイナミクスを踏まえたカウリングデザイン、2軸2次バランサーを実装しリジットマウントされたエンジン、そしてそこからアウトプットされるパワー。
その特異な性能や特性に惚れ込んだライダーたちを中心に話題となりながらも2006年に生産終了しかれこれ12年。
 
 
 今回はもうすぐ初代から20年を迎えようとしているハイパワーバイクの欠かせないメンテナンスです。
 
 
 樹脂パーツは経年による劣化が顕著に現れます。
 それは車両の保管や日々のメンテナンスによって変わってきますが、どんなメンテナンスをしていても劣化を防ぐことはできません。
 劣化してもある程度大丈夫なパーツもありますが、気づかないところで劣化していて致命的なことになってしまうパーツもあります。
 
 
 その、代表的なパーツが。。。燃料系ホースです。
(写真は他の車両)
 以前「ZX-9R E型 整備」の記事の後半でもとりあげましたが、樹脂ホースの劣化はヒビ割れがいちばん多く、その様子は外観からではなかなか見つけることができません。
 ZX-9Rの写真の様に、ホースの縦方向(流れる方向)に向かってヒビ割れがはいってくると、締め付けていても振動や動きによってヒビ割れを伝って燃料が漏れ出してきてしまいます。
 それを放置したままにして、それに引火してしまうと、、、
 そうならないためにも、車両の年式に応じた劣化が予想されるパーツのメンテナンスは重要になってきます。
 
 
 このような、それ相応の年式になろうとしているZX-12Rのフューエルホースの交換作業の一幕です。


(写真は他の車両)
 Kawasakiの技術力の挑戦とも言えるのでしょうか、バックボーン型モノコックフレームに直付けされたエンジン。
必然的にメンテナンスに必要なクリアランスはゼロに近い状態です。
 カウルを外して手を差し入れて、、、のような整備性の良い作業は遠くの彼方。
 
 
 ZX-12Rについては、この様にエンジンを半おろし状態にしなければ、十分な作業クリアランスをとることができません。
 横着してエンジンをずらさずに無理やり交換作業をすると、ほぼ間違いなく交換する新品のホースを痛めてしまいます。(実証済みです)
 それではフューエルホースを交換する意味がないので、横着はせず、丁寧に作業をできる様にするため、エンジンをずらすのですが、、、
 
 
肝心なエンジンをずらすためには、チェーンラインを外さないといけません。
 チェーンラインを外すためには、リアホイールを外さないとフリーになりません。


すると、こうなりました。

 
 ほぼ全バラに近い状態です。。。
 
 
 そして、そのフューエルラインですがスタートは当然ですがタンク下。
 
 
 そこからフレームの隙間を縫って配管されています。
 
 
 エンジンなどいろいろ外してこの状態です。
 経年による劣化での燃料漏れから車両が炎上しないための交換ですので、丁寧な作業でしっかりと配管しないと意味がなくなってしまいます。
 
 
 そして、ここまでバラしたのですから、スロットルボディーのチェックも行いました。
 ZX-12Rのパワーの源泉である巨大なスロットルボディー。46mmの大口径になっています。
 
 
 
 年式が古くなればなるほど、純正パーツが手に入らなくなってしまったりもするので気をつけてください!!

2018/08/28 16:34 | 整備日誌♪ | コメント(0) | トラックバック(0)

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2018年08月07日(火)

ZX-14Rフロント周りメンテナンス

ZX-14Rフロント周りメンテナンス
 
 
整備で必ずチェックするステムベアリング。そしてそのほとんどが「要メンテナンス!」と、言っても過言ではないステムベアリング。
このZX-14Rも例外ではなく要メンテナンス状態でした。
 
 
フロント周りのカウル、ブレーキキャリパー、ホイールとフロントフォークまで順番に外すとステムに至ります。
 
 
シャフトを抜いて露呈したステムベアリング。
もう、ほとんどグリスが残っていません。劣化によって樹脂のようになってしまっているものもあります。
この状態だと、潤滑効果をもたらすグリスが切れていることで、ベアリングなどの金属の摩耗や、雨水などの水分の浸入を許し、錆などの腐食をおこしてしまいます。
 
 
ベアリングを取り外した状態。
劣化して変色したグリスの跡が残っています。
 
 
ステムシャフト側のベアリング。
劣化したグリスや汚れがあるのがわかります。
こちらは交換しておいた方が良さそうです。
 
 
フレーム側、上部・下部です。
汚れもさほど酷くなく、酷い打痕もなく腐食もほとんどありませんでした。
しっかり清掃します。
 
 
ベアリングを取り外し、しっかりと清掃。
こちらも綺麗ですね。
 
 
グリスとあふれんばかりに充填してベアリングを装着。
 
 
次はフロントブレーキのオーバーホールです。
全体的にブレーキダストが付着しています。
オーバーホールのため、ブレーキパッドも取り外し、分解・清掃・点検を行います。
 
 
ブレーキパッドを取り外し、キャリパーピストンツールでピストン回転させ裏側もしっかり清掃・メンテナンスを行います。
レーキダストだけでなく、油分・水分・汚れなどがこびり付いて錆が出てしまいがちです。
サビや汚れはピストン内部のシールを痛めてしまいブレーキの性能を悪化させてしまうので注意が必要です。
 
 
右がメンテナンス後、左がメンテナンス前のキャリパーピストンです。
ブレーキダストの付着具合で違いがはっきりわかります。
ダストは抵抗になりますので、スムーズな動きをしなくなってしまいます。
ブレーキは最も信頼性が必要となる「止まる」の動作に必要不可欠なパーツです。動きの変化に気をつけておきましょう。
 
 
ブレーキキャリパーのオーバーホールを行い、ブレーキオイルも交換します。違いは一目瞭然。
ブレーキオイルの劣化は期間や状況で変わってきます。乗っていなくても劣化はしてしまいます。
悲しいことに密閉されている容器の中に入っていても湿気の浸入で劣化してしまいます。

2018/08/07 21:00 

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2018年07月31日(火)

Z1000F型 ミッションオーバーホール

Z1000F型 ミッションオーバーホール
 
2003年にZR1000Aとして再誕したZ1000。このF型はその5代目として2014年に発売されました。
 
 今回はミッションのオーバーホール。以前ご紹介したZX-10Rミッションリコール修理[1][2][3]と似た作業なのですが、ちょっと大掛かりです。
 以前のZX-10Rはカセットミッションのため、クラッチカバー・クラッチを取り外しミッションユニットのメンテナンスができましたが、Z1000はエンジンを下ろすところから始まります。
 
 
「エンジンを下ろす」と、文字にして8文字ですが、実際はかなりの作業内容となります。
外装、シート、タンク、マフラー、ゼネレーター、ラジエターなどなどエンジンにつながっているものすべてを取りはずします。
 
 
 
 
エンジンを下ろし、オイルパンを外した状態。
中央の写真はちょうどエンジンを下から見た状態なので逆さまになっています。
上の方がクランクシャフト側。下の方がミッション側になります
左右の写真で、ミッションシャフトの中心を境にエンジンケースに筋が見えます。この位置でエンジンケースを開けるとミッションが現れてきます。
 
 
 
ケースを開けてミッションを露呈した状態が右の写真。左はクランクシャフト側。
 
 
 
 
ようやく現れたミッションを細かく確認していきます。
 
 
 
 
シフトフォーク部分。
中央の拡大写真でよく見えますが、削れている部分とバリが立っている部分があるのがわかります。
回転しているものが擦れて削れてしまい、その影響でバリがでてしまっています。
 
 
 
 
さて、ミッションをばらしていきます。
ギヤチェンジを行うと、シフトドラムが回転しその角度に合わせてシフトロッドをガイドとしてシフトフォークが移動します。
シフトフォークが移動することによってギヤシャフトに緊結されていないギヤがスライドし、緊結されているギア側面にある突起(右の写真)と噛み合うことで回転動力を伝えていく仕組みになっています。
ローギヤに入れる時、カツンとくる衝撃はそのギヤ側面の突起と相手側のギヤと噛み合った時に生じるものです。
 
 
 
 
今回のオーバーホールの目的はこれ。
左の写真では突起が噛み合う部分の角が削れてしまっています。そして相手となる突起の角も削れているのが右の写真。
このような状態ではギヤが入っても入りきらず抜けてしまったりしてしまいます。
しっかりシフトチェンジが終わっていない状態でエンジンのトルクをかけてしまったりを繰り返してしまうとこのような状態になってしまいます。
 
 
 
 
不具合が起こっているギヤを交換していきます。
左が古いギヤで右が新品のギヤ。
 
 
組み上がったアウトプット側ミッションです。
 
 
 
 
こちらはシフトフォーク。交換します。
 
 
 スムーズに動かなくてはならない部分がこうなってしまっては本来の動きができなくなってしまうと同時に、工業製品には自然治癒能力はないので、放置しておくと悪化することしかありません。なにか異常に気づいたらら確認・点検をするようにしてください。
そして、なによりも日頃のメンテナンスが重要です。定期的な清掃やオイル交換などのメンテナンスをお忘れなく。

2018/07/31 21:00 | 整備日誌♪ | コメント(0) | トラックバック(0)

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